清算的財産分与-不動産(ローンがある場合の名義変更)

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清算的財産分与-不動産(ローンがある場合の名義変更)

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■単独名義・債務を移したい場合

例として、購入時は夫が所有者となり、夫がローン返済者である住宅を財産分与する場合を考えます。
収入の多い夫は、離婚して家を出ても生活できるので、財産分与としてあなたの名義(所有権)にしたいとしましょう。

不動産の名義変更をする登記は、登記所(法務局や支局・出張所など)で所定の手続きに沿って行うことができます。
なぜなら、住宅ローンを組んだ金融機関は、住宅に抵当権を付けていますが、抵当権と名義は別のもので、名義が変わっても抵当権は失われないからです。

何も問題ないように思えますが、通常、住宅ローン契約では、「名義変更の際には承諾が必要」という条項が必ずあります。
そのため、無断で名義変更すると契約違反になり、最悪の場合には一括返済を迫られることになります。
登記をする登記所から、名義変更の際に金融機関に通知が行くということはないので、実は名義変更は見つからなければ黙って行うこともできてしまいます。
そのまま返済が終わってしまえば良いのですが、滞納など何かの拍子に名義変更が見つかれば、金融機関は見過ごさないでしょう。

住宅ローンというのは、そこに住むことを前提として、ローン返済が可能であることを審査した上で行われる融資です。
つまり、住宅所有者(名義人)=ローン債務者となるのが普通です。
あなたが今後も住み続けるとしても、もともと融資した対象ではないので、あなたに夫と同等の収入がなければ名義変更や債務者変更を承諾してくれることはないと考えておくべきです。

もし、あなたに十分な資金があれば、あなたが夫から住宅を買い取り、夫はローンの残債を一括返済して抵当権を外した後に、あなたに名義変更する方法もとれます。
しかし、資金がなければ、あなたが別の住宅ローンを組んで資金を調達することになり、多くの場合、この夫婦間の直接取引目的での住宅ローンは審査が通らないとされています。
どうしてもということなら、第三者を間に挟んで売買するような手間のかかる方法になります。

結果として、名義も債務者も変えずに、夫は(債務者が住んでいないのは問題ですが)家から出ていき、あなたが住み続けるという方法をとることになったとします。
これは非常に危険で、夫の意思での売却やローン返済の滞納などによって、いつでもあなたは家を失いかねない状況下におかれます。
形式上の債務者は夫で、実質あなたが夫にローンの返済分を渡す(つまり賃貸と同じ)という方法も考えられますが、同じように所有者である夫によって売却される可能性は残ります。
また、離婚後は他人である元配偶者のあなたを住まわせ、住宅を貸している状態になることに金融機関が気付いた場合、住宅ローン契約に何か影響しないとも言い切れません。

安全のためには、あなたの名義でもなくローンも残っている住宅に、離婚後も住み続けるのはやめておきましょう。
「ローンが終わったらあなたに名義変更する」という約束があったとしても守られる保証はどこにもないのですから。

■共有名義・連帯債務(連帯保証)を単独名義・債務に移したい場合

例として、住宅の名義は夫とあなたが持ち分を決めており、住宅ローンは持ち分に応じて連帯債務になっている場合を考えます。
あなたは離婚をして家を出ていくので、他人である夫と連帯債務になったり、連帯保証人になるのは避けたいため、財産分与で夫の単独名義・債務に移したいとします。

名義の変更は、単独名義の場合と同じように登記所で行えばできますが、やはり事前に金融機関に相談して承諾を得なければなりません。
そして債務ですが、そもそも金融機関が住宅ローンとして融資を行うにあたり、連帯債務であるからこそ審査に通った可能性が高いでしょう。
夫の収入があり余る場合や、夫の持ち分比率が極めて高い場合を除いて、夫の単独債務への変更を承諾することはないと考えられます。

連帯保証人を外れたいという場合であっても、あなたの代わりの連帯保証人を求められると考えられます。
少なくとも、融資は連帯保証人を立てているからこそ可能なのであったと想定されるからです。

このような状況で、あなたの連帯債務者や連帯保証人としての立場を変えるには、ローンが完済されて抵当権が外れなければ難しいでしょう。
そこで、夫の単独債務にするために、ローン残債をすべて支払う目的で、別の住宅ローンに夫が借り換えます。
その際に、他の連帯保証人を付けたり信用保証会社に依頼することで、あなたを連帯債務者や連帯保証人から外します。

ローン残債を払い終えれば抵当権が外れるので、共有名義だった住宅を夫の単独名義にすることができます。