審判前の保全処分

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審判前の保全処分

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審判前の保全処分は、強制執行が困難になる恐れがあったり、緊急に行わなければ著しい損害や危険が事件関係者に及ぶ可能性があったりするときに、その対象を保全するための手続きです。

たとえば、支払いや仮払いが命ぜられることが見込まれる場合に、支払いや仮払いができるように財産を仮に差し押さえるということや、子供の監護関係では、子供の身に危険があるときに引渡しを命ずるなどです。

このような強制力を持つ処分が命ぜられるため、誤って使われないように、審判前の保全処分は、申立人の言い分が審判(本案)でも認められると推定される内容であり、一刻を争うだけの急迫性や、保全処分を行わなければならない必要性があることが条件になります。

「審判前」となっていますが、これは以前まで、必ず審判の申し立てが必要になっていたからで、平成25年から家事事件手続法が施行されて、調停中でも審判前の保全処分を申し立てることができるようになりました。

これによって、調停中に急に必要性が高まっても、審判を申し立てずに保全処分を申し立てられるので、保全処分までのスピードもアップし、必然的に事件関係者の保護に繋がっています。

また、調停の申立てがされていれば、審判前の保全処分を申し立てることができるため、調停の申立てと同時に審判前の保全処分を申し立てるケースもみられます。

そうしないと、調停が始まるまで待っていることで、保全の対象が失われてしまうからです。

なお、審判前の保全処分は、処分される側に重大な影響を与えるので、基本的には処分される側に陳述の機会が与えられます。

そして、審判前の保全処分に対する不服申し立て(即時抗告)も認められています。

ただし、審判前の保全処分に対する不服申立てがあっても、それだけで保全処分の執行が停止することはありません。

執行を停止するには、抗告人は保全処分の取消しの原因となる事情を家庭裁判所に説明するか、保全処分の執行で償えない損害が生じることを説明しなければならず、申立ても必要になります。

ですから、あなたが審判前の保全処分を申し立て、夫が即時抗告するとしても、ただちに執行停止とはなりませんので、効果が見込める制度と言えます。