人身保護請求と子の引渡し請求

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人身保護請求と子の引渡し請求

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人身保護請求は地方裁判所に、子の引渡し請求は家庭裁判所が扱う決まりです。

しかし、同じ子の引渡しを目的とする請求が、根拠法令も裁判所も異なるのは良いとは言えず、子の引渡しという親の争いであることを考えれば、全て家庭裁判所で処理されるべきだという見解は理解できます。

ただし、これまで人身保護請求のほうが審理は速やかで、早く子供を取り戻したい親は家庭裁判所手続きが遅延することを嫌い、人身保護請求が主に活用されてきました。

審判前の保全処分が可能になったことで、この点は変わりましたが、現在でも迅速性に乏しいとの評価もあります。

審判前の保全処分は、子の引渡し調停の成立または審判が確定する前に、申立てによって仮の処分として子の引渡しを命じるものです。

審判前の保全処分があっても、父母や子の監護者は即時抗告が可能ですが、単に即時抗告があっただけでは執行停止にならないので、保全処分の執行は可能です。

これは迅速性として考えられるところですが、審判前の保全処分によって子供が引き渡されても、その後の本案の審判、つまり仮の処分ではなく子の引渡し請求による審判が、保全処分と異なる判断になると、少し事情が変わるでしょう。

仮の子の引渡しを命じられた拘束者が命令に応じなければ、請求者は強制執行をすることになります。

そして、本案の審判で、子の引渡しを認めない判断がされたときは、請求者が取り戻した子供は、拘束者だった側に返す必要が生じます。

当然ですが、仮の処分とはいえ、一度取り戻した子供を容易に手放すはずがなく、本案の審判でも強制執行がされる可能性は高く、保全処分と審判の両方で強制執行がされてしまいます。

この状況は、子供にとって決して好ましいとは言えず、保全処分が適当であるか、慎重に判断するべきとして、保全処分を取り消した判例がありました。

確かに強制執行に対して、後から強制執行で返すような状況は避けるべきだとしても、審判前の保全処分がなければ、速やかに子の引渡しができる手続きが家庭裁判所にはなく、この判例には批判の声があります。